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犬の緑内障とは?症状・治療・予防・費用まで徹底解説

犬の緑内障とは?症状・治療・予防・費用まで徹底解説

この記事でわかること

犬の緑内障は、視神経が損傷して失明に至る可能性のある深刻な目の病気です。進行が早いため、早期発見と適切な対応が視力を守る鍵となります。

本記事では、緑内障の原因、症状、治療、予防、費用、そして飼い主がとるべき行動までを丁寧に解説します。大切な家族である愛犬の目の健康を守るために、ぜひ最後までご覧ください。

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犬の緑内障とは何か?

犬の緑内障は、進行性かつ失明のリスクが高い目の病気のひとつです。

「最近、うちの子が壁にぶつかるようになった」「目が白っぽく濁ってきた」と感じたことはありませんか?その症状、もしかすると緑内障かもしれません。

この病気は発症してからの対応が早ければ早いほど、愛犬の視力や生活の質を守ることができます。

本記事では、犬の緑内障の症状・治療法・予防・費用・飼い主としての対応までを、最新の獣医学的情報に基づいて分かりやすく解説していきます。

検索ニーズが多い「犬 緑内障」について、飼い主の皆さまが本当に知りたいことを網羅的にお届けします。

犬の緑内障の定義と特徴

犬の緑内障とは、眼球内部の「眼圧」が異常に高くなることで、視神経や網膜にダメージを与え、最終的に視力を失ってしまう目の病気です。眼圧とは、眼球内にある「房水(ぼうすい)」と呼ばれる液体の量と流れによって保たれる圧力のことです。

房水は常に眼内で生成され、不要な分は隅角(ぐうかく)という部分から排出されます。しかし、何らかの理由でこの排出が妨げられると、眼圧が上昇し、視神経を圧迫。その結果、視野が狭くなり、失明に至ることがあります。

この病気は放置すると取り返しがつかなくなるため、「早期発見・早期治療」が鍵となります。

人間との違いと共通点

緑内障は人間でもよく知られる病気ですが、犬の緑内障との違いもあります。共通点としては、眼圧の上昇が原因で視神経が損傷する点です。つまり、「眼圧」が大きなキーワードとなります。

しかし、人間の緑内障は徐々に進行する「慢性型」が多いのに対し、犬では「急性型」が非常に多く、進行が速いという違いがあります。犬の緑内障は発症してから数時間~数日のうちに視力が失われることもあるため、少しでも異変に気づいたらすぐに動物病院を受診することが重要です。

また、犬は自分の視力低下を言葉で伝えることができないため、飼い主が異変に気づいてあげることが最大の防衛線になります。

緑内障が犬に与えるリスクと影響

犬の緑内障は、視力を失うだけでなく、強い痛みを伴うという点でも見過ごせません。眼圧の上昇によって目の中の構造が押しつぶされることで、激しい痛みが生じ、犬は目をこすったり、しょぼしょぼさせたり、食欲不振になることもあります。

また、片目で発症した場合、もう片方の目にも将来的に同様の症状が出ることが多く、両眼の視力を失うリスクがあります。さらに、視覚障害によって生活の質(QOL)が著しく低下し、精神的ストレスも大きくなります。

そのため、緑内障は「治療のための時間との戦い」であり、早期発見・早期介入が犬の将来を大きく左右します。

緑内障の種類と発症メカニズム

急性緑内障と慢性緑内障の違い

犬の緑内障には大きく分けて「急性緑内障」「慢性緑内障」の2種類があります。

急性緑内障は、突然眼圧が急激に上昇し、目の外見や行動に明らかな変化が現れるのが特徴です。たとえば、目が急に赤くなったり、腫れぼったくなったりするほか、壁や家具にぶつかるようになることもあります。このタイプは数時間~数日で視力を失う可能性があるため、非常に緊急性の高い状態です。

一方、慢性緑内障は、眼圧の上昇が緩やかで、症状も目立ちにくいのが特徴です。初期段階では飼い主が気づかないことも多く、気づいたときにはすでに視力が失われているケースも少なくありません。

このように、緑内障のタイプによって対処方法や予後が大きく異なるため、獣医師による正確な診断と分類が必要です。

原発性・続発性・先天性の違い

犬の緑内障は、発症の原因によって以下の3つに分類されます。

  • 原発性緑内障:遺伝的な要因により、房水の排出経路に異常があることで発症するタイプです。特定の犬種に多くみられます。
  • 続発性緑内障:他の眼病(例:白内障、水晶体脱臼、ぶどう膜炎など)を原因として二次的に発症するタイプです。
  • 先天性緑内障:出生時から隅角などの目の構造に異常があり、成長とともに緑内障を引き起こすものです。犬では稀ですが、まれに見られます。

特に原発性と続発性は犬に多く見られるタイプで、遺伝的な背景や他の病気の管理が重要になります。

房水・眼圧と視神経の関係

犬の目の中には、常に「房水」と呼ばれる液体が生成されています。この房水は、毛様体という組織で作られ、シュレム管という排出口を通じて眼外へ排出されます。この排出と生成のバランスが取れていると、眼圧は正常に保たれます。

しかし、排出がスムーズに行われないと房水が溜まりすぎてしまい、眼圧が上昇します。その結果、眼球後部の「視神経」が圧迫され、次第に視力が低下し、最終的には失明に至ります。

一度損傷した視神経は基本的に再生しません。そのため、「視神経を守ること」が緑内障治療の最大の目的となります。 

      

犬の緑内障になりやすい犬種とリスク要因

好発犬種リストと年齢傾向

犬の緑内障は、すべての犬に起こりうる病気ですが、特に発症しやすい犬種が存在します。以下のような犬種は、原発性緑内障のリスクが高いとされています。

  • 柴犬
  • アメリカン・コッカー・スパニエル
  • ビーグル
  • シー・ズー
  • バセット・ハウンド
  • シベリアン・ハスキー
  • イングリッシュ・コッカー・スパニエル

これらの犬種では、緑内障を引き起こす遺伝的な隅角の異常が多く報告されており、発症年齢は3歳〜7歳頃と比較的若いうちに現れるケースが多いのも特徴です。

特に柴犬においては、日本国内での飼育頭数が多いため、緑内障の発症例も相対的に多く見られています。

遺伝的要因と犬種別リスク

原発性緑内障の原因の一つには、遺伝的な眼の構造異常があります。特にシュレム管の形成異常や、隅角の開きが狭い「狭隅角」と呼ばれる状態が緑内障を引き起こしやすいとされています。

このような構造的な要因は犬種によって遺伝的に受け継がれるため、上記のような好発犬種では、定期的な眼圧検査や隅角検査が重要です。特に家系に緑内障の既往がある場合は、早期からのケアが必要となります。

生活習慣・外傷との関係性

続発性緑内障の場合、原因となるのは他の目の病気や外傷です。以下のようなケースでは、眼圧が上昇するリスクが高まります。

  • ぶどう膜炎(眼内の炎症)
  • 水晶体脱臼
  • 眼球の打撲や外傷
  • 白内障の進行
  • 眼内腫瘍

これらの疾患によって、房水の排出路がふさがれたり、炎症によって目の内部の流体バランスが崩れると、眼圧が急激に上昇する危険があります。生活の中で目に強い刺激が加わるような事故や、他の犬との喧嘩も要注意です。

緑内障の主な症状と飼い主が気づくサイン

初期症状:赤み・目やに・涙

犬の緑内障は、早期に対応できれば視力を守れる可能性があります。しかし、初期症状はとても微細で見落とされがちです。以下のような変化に注意しましょう。

  • 目の充血(白目部分が赤くなる)
  • 目やにが増える
  • 涙が多くなる
  • 目を細める、まばたきの回数が増える

これらの症状は、軽い結膜炎や花粉症などのアレルギーにも似ているため、「いつものこと」と見過ごさないことが大切です。特に、好発犬種でこれらの症状が見られたら、動物病院での受診をおすすめします。

中期症状:視力低下・散瞳・充血

中期に進行すると、視力の低下が目立ち始めます。飼い主が気づきやすい行動の変化には以下があります。

  • 家具や壁にぶつかる
  • 夜間や暗い場所で動きが鈍くなる
  • 段差をうまく登れない、つまずく

また、見た目の変化としては、瞳孔が大きく開いたままになる(散瞳)ことや、白目の部分の血管が浮き出るように充血することがあります。

こうした症状は、「もう目が見えていないのでは?」と思わせるほどですが、完全に失明する前に治療を始めれば、視力を回復できる場合もあります。

末期症状:眼球の拡大・失明

緑内障が進行すると、眼圧の持続的な上昇により眼球全体が膨張してしまい、「牛眼(ぎゅうがん)」と呼ばれる状態になることがあります。これは眼球が大きくなり、見た目にも明らかに異常がある状態です。

視神経が完全に損傷している場合、視覚の回復はほぼ不可能です。さらに眼球内の痛みも継続しているため、生活の質を守るために眼球摘出や義眼挿入の手術が検討されることになります。

失明に至っても、愛犬は嗅覚や聴覚で生活を支えられるため、早期に環境を整え、心のケアをしてあげることが大切です。

犬の緑内障の診断と検査方法

動物病院で行われる検査の流れ

犬の緑内障を正確に診断するには、動物病院での専門的な検査が欠かせません。まず行われるのは、飼い主への問診と視診(目の見た目の観察)です。

問診では、「いつから異変があるか」「どのような症状が出ているか」「他の病歴はあるか」といった内容が確認されます。視診では、眼の充血、濁り、瞳孔の開き具合、眼球の大きさなどをチェックします。

その後、必要に応じて以下のような精密検査が行われます。

眼圧測定と隅角検査の役割

眼圧測定(トノメトリー)は、緑内障診断の最重要検査です。専用の機器を使って目の表面に軽く接触させ、眼球内圧(眼圧)を測定します。通常の犬の眼圧は15〜25mmHg程度とされ、それ以上であれば緑内障の疑いが強くなります。

また、隅角検査(ゴニオスコピー)も行われる場合があります。これは目の中の「房水」の排出経路である隅角の形状や開き具合を確認するための検査で、特に原発性緑内障が疑われる際に有効です。

隅角が生まれつき狭い、あるいは閉じていると、眼圧が上がりやすくなるため、予防的検査として健康な目でも実施することが推奨されています。

視神経検査と網膜評価

緑内障による視神経への影響を確認するために、眼底検査(オフトモスコピー)が行われます。この検査では、網膜や視神経乳頭の状態を観察し、障害の有無や進行度を判断します。

また、視覚の有無を調べるために、綿球落下試験障害物テストなど、簡易的な行動観察が行われることもあります。これらはあくまで補助的な判断材料ですが、愛犬の「見えているかどうか」を知るうえで非常に参考になります。

状況に応じて、超音波検査やCT検査などが実施されるケースもあります。とくに腫瘍の疑いがある場合や、視神経の変性が進んでいる可能性がある場合には、より高度な検査が選択されます。

犬の緑内障の治療法

内科的治療:点眼薬・内服・点滴

犬の緑内障において、視力が残っている場合や発症初期では、内科的治療が第一選択となります。主な目的は、眼圧の上昇を抑え、視神経のダメージを最小限にすることです。

この治療では、点眼薬・内服薬・点滴などを使って、房水の生成を抑えたり、排出を促進したりすることで眼圧を調整します。また、眼の炎症や痛みに対応するための薬も併用されることが一般的です。

ただし、内科的治療は継続的な管理が必要であり、時間帯や頻度を守った投与が求められます。症状の安定を図るためには、飼い主の協力が非常に重要となります。

外科的治療:バイパス手術・義眼・摘出

内科的な治療で十分な効果が得られない場合や、すでに視力が失われていて痛みを伴っているケースでは、外科的治療が選択されることがあります。

この段階では、眼圧の正常化と痛みの軽減を目的に、外科的手段で房水の流れを調整する方法や、眼球の除去・義眼の挿入といった処置が検討されます。

視力が完全に失われている場合でも、慢性的な痛みや眼球の変形を防ぐために外科的なアプローチは有効です。治療の選択肢は、病状の進行度、犬の年齢や体調、生活の質を重視して総合的に判断されます。

治療法選択のポイントと症例別方針

治療法の選択には、いくつかの重要な判断ポイントがあります。最も大きな分かれ目は、視力が残っているかどうかという点です。

  • 視力がある場合 → 点眼薬などの保存的治療を中心に、眼圧のコントロールを試みます。
  • 視力がない場合 → 痛みを取り除くことを優先し、外科的な処置が検討されます。

また、発症していない側の目についても、予防的なケアが必要となるケースがあります。特に原発性緑内障の場合、もう片方の目にも高確率で発症する可能性があるため、事前の予防管理が非常に重要です。

治療の選択は、愛犬の性格や生活スタイル、飼い主の通院負担、費用面なども考慮しながら、かかりつけの獣医師と相談して慎重に進めましょう。状況に応じて、眼科を専門とする動物病院でのセカンドオピニオンもおすすめされます。  

     

手術後・失明後のケアと生活の質(QOL)

手術後に注意すべきこと

犬が緑内障の治療として手術を受けた後は、術後のケアが非常に重要です。たとえば、眼球摘出や義眼手術の直後は、目の周囲に腫れや痛みが出ることがあります。エリザベスカラーの装着は必須であり、愛犬が傷口を引っかいたり舐めたりしないように注意しましょう。

また、獣医師の指示に従って抗生物質や鎮痛剤の投与を続ける必要があります。傷口の化膿を防ぐため、衛生管理にも細心の注意を払いましょう。

定期的な経過観察のために、術後1週間・1ヶ月・3ヶ月といったタイミングで動物病院を受診することが推奨されます。異常が見られた場合は、すぐに相談するようにしましょう。

失明後でも快適に暮らすために

犬は人間と異なり、視覚に頼らずとも生活できる感覚(嗅覚・聴覚)が非常に発達しています。たとえ完全に失明したとしても、環境を整えてあげれば、これまでとほとんど変わらない生活を送ることが可能です。

まず大切なのは、家具の配置を変えないことです。視覚に頼れない犬は、鼻と耳、そして「記憶」で家の中を把握しています。そのため、ソファの位置やトイレの場所、食器の位置などを急に変えると混乱してしまいます。

また、足音や声をこまめにかけてあげることも安心材料となります。名前を呼んだり、「ここにいるよ」と声をかけてあげることで、犬は不安を感じずに過ごせます。

生活環境・遊び方・ストレス管理

失明した犬にも「遊び」や「刺激」は必要です。視覚に代わる楽しみを提供するために、音が鳴るおもちゃや香り付きのグッズを活用しましょう。

また、散歩もストレス発散の重要な要素です。リードは短めにし、段差の少ない安全なコースを選んで歩かせると安心です。人通りの多い場所や他の犬との接触には十分に注意し、周囲に配慮しながら歩くようにしましょう。

日常生活の中で、急な音や振動は不安やストレスの原因になることがあります。優しい声かけやスキンシップを心がけ、愛犬が落ち着ける環境を整えてあげてください。

犬の緑内障の予防と早期発見の重要性

予防できる緑内障とできない緑内障

犬の緑内障には、完全に予防できるタイプと、そうでないタイプがあります。たとえば、原発性緑内障のように遺伝的な要因が強く関わっているものは、現時点では予防が難しいのが現実です。

一方、続発性緑内障の場合は、原因となる他の疾患(ぶどう膜炎、白内障、水晶体脱臼など)を早期に治療することで、緑内障の発症を未然に防げる可能性があります

そのため、犬が他の目の病気を抱えている場合は、「視力に関係ないから」と放置せず、獣医師の指導に基づいた定期管理が必要です。

家庭でできる目のチェックリスト

日常生活の中でも、飼い主が目の異常に早く気づくことが、緑内障の早期発見につながります。以下のようなサインを毎日のケアの中でチェックしてみてください。

  • 目が赤くなっている
  • 涙の量が増えている
  • 白目が充血している
  • まばたきが多い、目を細めている
  • 物によくぶつかるようになった
  • 瞳孔の大きさが左右で違う
  • 光に対する反応が鈍い

これらのサインが1つでも見られた場合は、迷わず動物病院を受診してください。特に緑内障は、時間の経過とともに視神経が不可逆的に損傷していくため、1日でも早い診察・治療が重要です。

高リスク犬の定期健診のすすめ

原発性緑内障のリスクが高い犬種(柴犬、コッカースパニエル、シーズーなど)を飼育している場合は、症状が出ていなくても定期的な眼科検診を行うことが推奨されます。

特に、片目を緑内障で失明した場合、もう片方の目に発症する可能性が非常に高いため、予防的な点眼治療を開始するケースもあります。

動物病院によっては、眼圧測定を含む「眼科ドック」のようなメニューを用意していることもありますので、かかりつけの獣医師に相談してみると良いでしょう。    

白内障との違いとは?混同しやすい目の病気との比較

緑内障と白内障の症状の違い

「愛犬の目が白くなってきた」「光に対する反応が鈍くなった」といった変化に気づいたとき、多くの飼い主がまず思い浮かべるのは「白内障」かもしれません。しかし、緑内障と白内障は異なる病気であり、症状や進行、治療法も大きく異なります。

白内障は、水晶体が白く濁る病気です。濁りによって視界が遮られ、徐々に視力が低下していきますが、痛みはほとんど伴いません。一方、緑内障は眼圧が上昇して視神経が傷つくため、激しい痛みや眼の腫れが見られることが特徴です。

さらに、白内障は見た目で比較的分かりやすいのに対し、緑内障は進行するまで気づかれにくく、発見が遅れやすいという落とし穴があります。

治療法と完治の可能性の違い

白内障は、手術によって人工レンズを挿入することで視力の回復が期待できます。成功率も比較的高く、適切なタイミングで手術すれば、視覚機能を取り戻すことが可能です。

一方、緑内障は視神経が損傷してしまうと元に戻すことができません。そのため、「治療」とは視力の回復ではなく、眼圧を下げて進行を止める・痛みを取り除くことが主な目的となります。

この違いにより、緑内障は「時間との戦い」であり、早期発見と早期治療が視力を守る鍵になります。

犬における病気の関係性

実は、白内障と緑内障は併発する可能性もあるため、注意が必要です。特に高齢犬では白内障が進行することで水晶体が脱臼し、それが続発性緑内障を引き起こす原因になることもあります。

そのため、白内障を放置しておくと、結果的に視力だけでなく眼球そのものを失う事態に繋がりかねません。たとえ痛みがなかったとしても、白内障を軽く見ず、定期的な眼科チェックを受けることが重要です。

緑内障治療にかかる費用と保険対応

点眼薬・内服薬のコスト目安

犬の緑内障の治療において、まず導入されるのが点眼薬や内服薬による内科的治療です。これらは継続的に使用する必要があるため、費用面も気になるところです。

以下は、一般的な費用の目安です(2025年現在):

  • 点眼薬(1本あたり)…約2,000円〜4,000円
  • 内服薬(1週間分)…約1,500円〜3,000円
  • 初期診察・眼圧検査…3,000円〜5,000円

これらの費用は、薬の種類や通院頻度、病院の地域差によっても変動します。慢性疾患である緑内障は、数ヶ月〜年単位の通院が必要になるケースも多いため、長期的な治療費の把握が大切です。

手術費用と通院費用

外科的治療に進んだ場合、費用は一気に高額になります。手術の種類によっても異なりますが、おおよその目安は以下の通りです。

  • バイパス手術(インプラント手術)…15万円〜25万円
  • 義眼挿入手術…10万円〜20万円
  • 眼球摘出手術…8万円〜15万円

これに加えて、術前検査や入院、再診などで通院費が1回あたり5,000円〜1万円前後かかることも考慮する必要があります。

また、術後のケアや薬代も継続するため、トータルでは数十万円規模になることも珍しくありません

ペット保険で補償される範囲

緑内障の治療費負担を軽減するためには、ペット保険の活用も検討したいところです。多くの保険では、通院・手術・入院に関する補償が含まれていますが、加入前に以下の点をチェックしましょう。

  • 緑内障が補償対象の病気に含まれているか
  • 点眼薬・内服薬も対象になるか
  • 保険金支払いの上限や回数制限

特に、既往症(すでに緑内障と診断済)の場合は補償外となるケースがほとんどです。そのため、愛犬が好発犬種である場合や高齢になった場合には、早めの保険加入が賢明です。

また、保険会社によっては、眼科専門の治療を対象外としていることもあるため、契約時には必ず詳細な補償内容を確認しましょう。

飼い主が今すぐできる対応

症状に気づいたときの初動

緑内障は進行が早く、視力の回復が難しい病気です。そのため、「もしかして緑内障かも?」と思ったときの初動が非常に重要です。目に異常を感じたら、すぐに動物病院を受診しましょう。

次のような兆候が見られたら、緑内障の可能性を視野に入れて対応してください。

  • 目が赤い・腫れている
  • 目をしょぼしょぼさせている
  • 暗い場所でよくぶつかる
  • 目の白濁や瞳孔の開きが気になる

これらは初期症状であることも多く、24時間以内の対応が視力を守るカギとなります。

受診前に準備すべきこと

スムーズに診察を受けるためには、以下の点を事前にまとめておくと獣医師による診断がスピーディに行えます。

  • 症状が出始めた時期と経過
  • 目以外に気になる症状(食欲低下、元気がないなど)
  • 目の写真(充血や白濁が分かるもの)
  • 他の病歴や現在の服薬状況

可能であれば、ビデオで行動の変化(ぶつかる様子など)を記録しておくと、客観的な判断材料になります。

通院後のケアと観察ポイント

診断後は、点眼治療や内服薬の指示に正しく従うことが最も大切です。点眼薬は「1日3回、時間を空けて」など、厳密な指示がある場合が多いため、タイマーやアプリを使って管理しましょう。

また、以下のような変化がないか毎日観察してください。

  • 目の状態が悪化していないか
  • 点眼後に嫌がったり、異常がないか
  • 視覚がさらに落ちていないか(歩き方、反応)

何か気になる変化があれば、すぐに動物病院へ相談することが、進行を防ぐ手段となります。

犬の緑内障に関する最新情報と研究

再生医療・新薬の開発状況

近年、犬の緑内障に対する研究が進み、再生医療や遺伝子治療の可能性が注目されています。たとえば、視神経の再生を目指す研究や、網膜保護を目的とした細胞治療などが動物モデルで検証されています。

さらに、従来より副作用が少なく、長時間作用する点眼薬の開発も進んでおり、将来的には1日1回の点眼で管理できる薬剤が登場する可能性もあります。

動物眼科の技術進歩

動物眼科は近年、人間の眼科医療とほぼ同等レベルまで進化しています。眼圧のモニタリング機器、レーザー治療装置、眼内インプラントなどの精度が向上し、犬の緑内障治療の選択肢も広がっています。

また、麻酔リスクを抑える術式や、術後ケアの効率化も進んでおり、高齢犬や合併症のある犬にも対応しやすくなっています。

海外での治療動向との比較

海外では、特にアメリカやイギリスでの獣医眼科分野が進んでおり、予防的点眼によるコントロールが一般的になっています。また、動物用義眼の種類も豊富で、美容的・精神的ケアにも配慮された治療が確立されています。

日本でも今後、海外の先進技術が取り入れられることで、より多様な治療法が選べる時代が来ると考えられます。

まとめ:愛犬の視力と命を守るために

早期発見と迅速な治療が鍵

犬の緑内障は、放っておくと失明や眼球摘出といった深刻な結末を招きます。しかし、早期に発見して適切な治療を行えば、視力を守れる可能性は十分にあります

違和感を感じたら迷わず行動し、初動を早くすることが何よりも大切です。

飼い主の観察力と知識が未来を変える

犬は自分の不調を言葉で伝えることができません。その代わりに、日々の観察と小さな変化に気づく力が飼い主には求められます。

このページで得た知識を活かし、愛犬の「視る力」と「生きる力」を守ってあげてください。

愛犬と共に前向きに歩むために

たとえ視力を失ったとしても、犬は驚くほど前向きに生きてくれます。あなたの愛情と支えがあれば、視覚に頼らずとも楽しく、豊かに暮らすことができます。

どうか焦らず、一歩ずつ。あなたと愛犬が一緒に過ごす時間が、これからも笑顔に満ちたものでありますように。

よくある質問(FAQ)

Q1. 犬の緑内障は完治しますか?

残念ながら、緑内障そのものを「完治」させることは難しく、視神経が一度傷つくと元には戻りません。治療の目的は眼圧を下げて進行を抑えることです。ただし、早期発見すれば視力の維持は可能です。

Q2. 緑内障の点眼薬は一生続けないといけませんか?

緑内障は慢性疾患のため、基本的には継続的な点眼が必要です。症状が安定していても、獣医師の指示があるまでは自己判断でやめないようにしましょう。

Q3. 緑内障の痛みは犬にとってどのくらい辛いですか?

犬の緑内障による眼圧上昇は、頭痛や激しい目の痛みを伴うことがあります。犬が目を気にしている、食欲が落ちた、元気がないといった場合は痛みによるストレスが強い可能性があります。

Q4. 義眼を入れても犬は生活できますか?

はい、可能です。義眼は美容目的だけでなく、痛みを取り除く外科的手段としても使われます。視力は戻りませんが、見た目や生活の質が大きく改善する場合があります。

Q5. 緑内障になった片目だけ治療すれば大丈夫?

いいえ、もう片方の目にも発症する確率は非常に高いです。片目が緑内障と診断された時点で、反対側の目も予防的点眼や定期検査が必要になります。

編集者情報

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