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INTERVIEW

インタビュー

動物理学リハビリ国際協会APRIA 会長
岸本 誠也

犬のリハビリが“当たり前”になる未来へ|犬との暮らしを豊かにする新しい常識

「リハビリは特別なもの」――そう思っていませんか?
実は、犬のリハビリは“病気やケガのあと”だけでなく、“今の健康を守る”ためにも大切なケアです。


今回は、犬のリハビリ普及に取り組む岸本さんにインタビューし、リハビリの可能性と未来について詳しく伺いました。

目次

“学び”から“実践”へ。協会の活動とは?

――協会の活動内容について詳しく教えてください。

岸本:当協会では主に三つの柱で活動しています。

一つ目は、基礎から応用まで段階的に学べる「連続セミナー」、

二つ目はテーマに応じて開催する「単発セミナー」、

そして三つ目が、年間を通して体系的に学べる「スクールプログラム」です。

参加者は獣医師や動物看護師といった専門職に加え、近年ではトリマーやドッグトレーナー、そして愛犬家の方々の参加も増えています。特に飼い主さんにとっては、専門家と同じ視点で学ぶことにより、日々のケアに大きな変化が生まれることが魅力だと感じています。

セミナーとスクールの違いとは?

――セミナーとスクールの違いを教えてください。

岸本:セミナーは2~3日間の短期集中型で、基本的な知識を習得した後は各自のペースで学びを深めていくスタイルです。

一方、スクールは1年間をかけてじっくり学ぶ形式で、定期的な実習も含まれます。

教材もスクールではより専門的で、300ページを超える資料を使います。

愛犬家の方であれば、まずはセミナーでの学びがおすすめですが、本格的なスキルを習得したい方はスクールが理想的です。

動物病院との役割分担で広がるケアの場

――動物病院との役割分担はどう考えていますか?

岸本:病院では手術後や怪我後のリハビリを担うのが中心です。

しかし、本来リハビリは“予防”や“パフォーマンス向上”にも活用できるものです。

理想は、愛犬家が通えるフィットネス施設などで日常的なケアを行い、病院は医療的ケアに専念するという分業体制です。そうすれば犬の健康管理全体の質が上がります。

“癒し”ではなく“健康を守る運動”としてのリハビリ

――マッサージや整体とリハビリはどう違うのですか?

岸本:マッサージや整体もリハビリに含まれますが、リハビリの本質は「動きやパフォーマンスを整える」ことです。

実生活の中で必要な動作、たとえば立ち上がる、歩く、座る、走るなどの動きを改善・強化するための運動を重視します。

犬には言葉が通じないので、フードで誘導したり、バランスボールを使ったりと、その子に合った方法でトレーニングを行います。飼い主さんにも「癒し」だけでなく「健康を守る運動」としてのリハビリを意識してほしいですね。

欧米との違いと、日本におけるリハビリ文化の可能性

――欧米と日本では犬のリハビリに対する意識に差はありますか?

岸本:欧米ではリハビリが当たり前に行われており、犬専用のフィットネスジムも存在します。怪我をしても、適切なリハビリを経て介助犬や警察犬が現場復帰するケースも多いです。

一方、日本では怪我をきっかけに引退する例がまだ多く見られます。ただし最近では、予防や体力維持のためにリハビリを取り入れる飼い主さんも増えており、良い兆しだと感じています。犬の健康を守る文化が、日本でも徐々に育ってきていると実感しています。

続けることが大切。日常に取り入れるリハビリ

――飼い主が日常でできることはありますか?

岸本:もちろんあります。

たとえば、月に1回、同じ角度で写真や動画を撮ることで、犬の体の変化に気づきやすくなります。特にシニア犬は、ゆっくりとした変化が見えにくいため、記録が大切です。

散歩やおもちゃを使った遊びも、立派なリハビリになります。大切なのは「特別なことをする」のではなく、「無理なく続けること」です。遊びの延長であっても、積み重ねが犬の健康につながります。

“立てない”から“立てられる”へ。感動のエピソード

――印象的だったリハビリエピソードを教えてください。

岸本:ある日、寝たきりの状態になっていた犬が相談に来ました。飼い主さんは「もう立てないかも」と心配されていましたが、実際は筋力の問題ではなく、「体の使い方を忘れていただけ」だったんです。

そこで、立ち上がるための姿勢や足の動かし方を少しずつ教えていくと、自分の力で立ち上がることができるようになりました。その後、歩く意欲も出てきて、今では元気に走り回るまでになりました。

飼い主さんもご自宅で毎日ケアを続けてくださり、現在は3か月に1回のチェックだけで十分です。

このように「できない」ではなく「できるかもしれない」に目を向けて寄り添うことが、私たちの役割だと思います。

今後の展望と、目指す未来

――今後の展望を教えてください。

岸本:今後は、東京や大阪だけでなく、名古屋など新たなエリアにも拠点を広げていく予定です。より多くの愛犬家が通いやすいよう、フィットネス施設の数も増やしていきます。

そして最終的な目標は、動物のリハビリが「特別なこと」ではなく「当たり前のこと」になる社会の実現です。

病院でも家庭でも、犬の健康維持にリハビリが自然に取り入れられる未来を目指しています。

プロとつながり、「犬との生活」をより豊かに

――ドッグスペシャリストナビ読者へメッセージをお願いします。

岸本:病気になってから治すのは大変ですが、今の健康を維持するのはそれほど難しくありません。若い犬も、シニア犬も、「今できることを毎日続けること」が一番大事なんです。

たとえば、散歩のルートや歩き方を工夫する、家の中でのちょっとした運動を習慣にする――それだけでも大きな違いが生まれます。

プロとつながることで、犬との生活がもっと楽しく、もっと安心なものになるはずです。

編集後記

「犬のリハビリが“特別”ではなく“当たり前”になる未来をつくる」――岸本さんのお話からは、その信念と情熱がまっすぐに伝わってきました。

特に印象的だったのは、“立てない”のではなく、“立てる可能性に目を向ける”という姿勢です。寝たきりだった犬が再び歩き出した瞬間は、まさに犬と飼い主の新たな未来が始まる瞬間でした。

リハビリは「治すための特別なもの」ではなく、「日常のケアの延長線上」にあるべきもの――この記事が、すべての飼い主さんにとって、前向きな気づきや行動のきっかけになれば幸いです。

 

編集者情報

ドッグスペシャリストナビ運営事務局は、犬の健康を守りたいすべての飼い主さまに向けて、信頼できる専門家情報を発信しています。

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