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INTERVIEW

インタビュー

特定非営利活動法人日本ペットシッター協会 理事長
木下 文吾

ペットシッターの未来と信頼のカギとは?

記念すべき第1回は、大切なペットの安全と健康を守り、安心感を与えてくれる、信頼できるパートナーとなるペットシッターの育成・教育を行う「特定非営利活動法人日本ペットシッター協会」理事長の木下文吾さんにお話をきかせていただきました。 

目次

ペットシッターの役割とは?

―ペットシッターさんというとわんちゃん猫ちゃんの面倒を見てくださる方というイメージなのですが、実際にどのようなサービスを提供しているのか聞かせてください。

私たちペットシッター協会はペットシッターの育成・教育を行って、ペットシッターの資格の発行をする団体なんですね。なので、育成・教育と、資格発行、その先の開業のお手伝いまでをしています。

コロナがあけて旅行にも行くようになって、シッターさんのニーズはどんどん高くなっていっています。例えば、猫ちゃんのご依頼が増えているのですが、猫ちゃんはホテルよりペットシッターがいいかな、と考える方が多いです。 とはいえ、ペットシッターの市場はまだなかなか確立されていないところです。飼い主さんの自宅に上がることは、非常に大きなハードルです。そこをどのように開拓したらよいか、その指導が必要です。

―シッターさんの育成は、そこがポイントなんですね。

はい。わんちゃん、猫ちゃんと触れ合いたいという想いがあっての仕事ですが、お仕事をするうえで何より大事なのがオーナーさんとのコミュニケーションです。しかも初回のカウンセリング、ここが一番大切なんですね。 何月何日から旅行に行きます、とご依頼いただいた時に、オーナーさんと事前のカウンセリングをします。その時に飼い主が何を求めているのかをしっかり聞き取ることが大切で、普段の接し方やご飯、万が一病気の時はこういう対応をしている、緊急事態はこうします、というものを、一つ一つ聞き出さないといけないんです。それぞれ飼い主さんで全然違うので、そこをしっかりヒアリングします。このコミュニケーションがとても大事なところです。

―飼い主さんとのカウンセリングはどれくらいされるんですか?

まちまちですが、30分~1時間。飼い主さんによりますね。飼い主さんが伝えたいことがあふれ出る方もいらっしゃいますし、簡単に済ませられる方もいます。

―ペットシッターさんは、あらゆる種類のペットのお世話をされるんでしょうか?

そうです。基本は所属している会社や、個人でやられているシッターさんも含めて、そのシッターさんがokであればなんでもお世話します。 ですが、シッターさんによっては大型犬NGとか、小型犬のみ、猫ちゃんのみ、という方もいらっしゃいます。 今度私達が予定してるものは、ペットシッターさん向けの鳥の扱い方のセミナーや勉強会があります。 犬猫だけでなく、フェレットやうさざ、鳥も増えてきています。なので、どのように対応すべきか、どういうことを学べば良いのかを、シッターさん向けにセミナーするんです。

―近年ペットも多様化していますよね 。

だからオールマイティにお世話できないといけない。ある方はハムスターに強いことを強みにして、ハムスター専門シッターということで一時期でグイッと伸びたりしました。特徴がある方が伸びますね。

―最近ははりねずねなども聞きますよね。

あります。種別は本当にいっぱいあると思います。

―大変ですよね。わんちゃんですら、犬種がそれぞれ違いますし、その中でまたそれぞれ個々の性格もありますよね。

そうなんです。そこで「知らないので」と断ると、ご依頼を1つロスしちゃうわけです。断る、受ける、というのは本当に難しくて、だからこそカウンセリングが大切です。 爬虫類や、ハリネズミなど、特殊な育て方や動物は難しいのですが、可能な範囲で幅広くサポートさせていただいています。

信頼できるペットシッターの基準

―世の中には無資格のシッターさんもいらっしゃいますが、信頼できるペットシッターさんのポイントはどこでしょうか?

法的な話にもなるのですが、ここが確立されていないところです。ペットシッターって、飼い主さんが出かけるのでその間ちょっと預かる、と安易に捉えがちなんですが、その後トラブルが起きて管理センターに相談が入るケースが多いんですね。どの様な問題かというと、お預かり中に起きたトラブルに対する因果関係だったり、ケアだったり。で話を聞くと、無資格で1,000円で預かりました、ということが多いです。だから、きちんと協会に加盟している有資格の方を選択していただくのが最も重要です。極端に言うと、お世話中にわんちゃんが誤飲したとか、吐いちゃったとか、いろんなトラブルに対しての保証がちゃんとしっかりついています。そこは大きいですね。安心か、安心でないかが第一。そして飼い主さんがいらっしゃらない時におうちに入りますので、そこはペットだとしても安易に預かるっていう考えは良くないですね。 シッター自身の家で預かるのと、飼い主さんのご自宅でシッターをするのは違います。基本は飼い主さん個人のご自宅でシッティングして帰ります。ですからトラブルを防ぐためにも、有資格者のペットシッターさんにご依頼ください。さらに重要なのが、初回のカウンセリング時の対応やコミュニケーション能力です。初対面で飼い主の希望やペットの特性を十分に理解し、信頼関係を築けるかどうかです。カウンセリング費用や交通費など、料金体系についても明確に説明してくれることが安心できる要素です。資格や実務経験、動物取扱業の登録、保険加入、飼い主との初回カウンセリングの内容やコミュニケーション能力がポイントとなります。

ペットシッターの仕事の流れ

  ―1日の流れを教えてください。

シッティングは基本45分~1時間半程度で、わんちゃんのお散歩をしてご飯をあげて。猫ちゃんだとそこから遊んであげるというかたちです。報告や写真の提供も重要なサービスの一環です。シッターさんは伺ってからの、様々な作業を1つ1つチェックして、これを対応しましたという報告、これの繰り返しです。なのでやはり飼い主さんとのコミュニケーションが大切になります。 都度報告し、写真をとって安心していただいたり。「今日はこれくらいごはん食べました」「こんな遊びをしました」など随時行います。そのため、依頼が多い方で1日6件~7件が限界です。

ペットシッターに向いている人

―どのような方がペットシッターに向いていますか。

ニーズが多様化していて、極端な例でいうと「泊まってください」という飼い主の方もいらっしゃいます。 例えば海外出張に行くので、長期間出かけますと、毎日朝昼朝昼来てもらうの手間だし、わんちゃん寂しいからちょっと泊まってくださいというご依頼です。最近こういうシッターさんが増えてきている気がします。

―すごい信頼関係の賜物ですよね。

本当に飼い主さんからどう信頼されるかというスペシャリストみたいな話で、いろんな相談や、意見を求められます。自分で育てているペットを預けるって信頼がないと難しいので。

―みなさん本当に「ウチの子」っておっしゃっていて、我が子ですよね。

はい。スペシャリストとしてお世話するために知識も必要です。昔のようにお散歩代行だけではなく、スペシャリストとしての目線で飼い主さんも気づかないようなことに気づいてアドバイスする必要があります。シッターは幅広い知識も必要だし、対応力も求められますし、ましてや飼い主さん不在の時に居てくれたらいいなと思っていただくための対応力が必要なので結構大変なんです。

―マルチな才能が求められますね。

そうですね、かなり重要です。とはいえ、まずは好きという気持ちがないと。例えば猫カフェだとお金を払って猫ちゃんと触れ合うことができます。ですが、ペットシッターはお金をいただいて触れ合います。その感覚ってすごく大事なんです。それと飼い主さんとのコミュニケーションですね。会話のキャッチボールがしっかりできないといけないので、飼い主さんが求めてるものを察して、ちょっとそこを聞き出してあげることが重要です。

―例えばですが、飼い主さんとはコミュニケーション取れていても、それでもなつかないわんちゃん猫ちゃんもいますか?

全然います。それこそまったく出てきてくれない猫ちゃんもいます。ペットシッターはそこに対応する必要があります。無理やりいくと絶対出てこないので、何回か通ってなれてもらう、それを根気強く回数重ねてしっかり対応していきます。

―確かに猫ちゃんは人見知りするイメージがあります。

むしろそれが普通です。なかなか人間が大好きな猫ちゃんっていないですよ。

―反対に、どんな動物もなつかせてしまう、というシッターさんもいますか?

います!私たちの講師のなかには、動物が大好きで、いろんなペットに対して興味があるんでしょうね、すぐに懐にはいって。

―まさにスペシャリストですね!

ペットシッターになるには

―ペットシッターの資格をとるにはどんな勉強をしますか?

通信講座と通学コースがあって、通信コースだと約1ヶ月です。しっかりテキストを読み込んでいただき、自宅でeラーニングを見ながらスマホで勉強する方法です。通学講座は4日間集中して勉強して取得するパターンです。私たちは環境省に管轄されるので、資格の最終は対面の試験じゃないといけないので、きちんと試験日に来ていただいて試験を受けて合格とさせていただきます。ですが、合格しても、学科だけです。そこから実務経験が必要です。実はこの実務経験が問題なんです。数年前までは学科のみで資格取得して開業ができましたが、今はできません。なので当協会ではセワクル、ラブペットと言って、ペットシッターのエンドユーザー向けのサービスがあります。ペットシッターの資格取得後、そこでペットシッターのアルバイトをしながら実務経験を経て、その後に開業するのもいいし、そのままそこで仕事していくのもいいし、というような形で選択できるような仕組みを強化しています。

―実務経験というと、例えば何時間以上触れ合う、ということでしょうか?

実務経験は6か月~1年が条件になります。その6ヶ月の密度は各地方自治体で違うんです。ある地域だと6か月~8か月、かつ1か月の雇用実績が何時間以上ないといけない。一方、ある 地方だと雇用関係なくても第三者の犬猫ペットを飼育した記録を1年取っていたというだけでOKだというところもあります。だからこれが非常に難しいです。私たち協会も安易に実務経験をすれば、動物取扱業の申請が可能ですと言い切れません。これも私たち業界全体の問題です。

―そうすると信頼できるペットシッターさんを選ぶポイントが、資格の有無だと思っていたのですが、一概に言えないですね。

本当に難しいと思います。

―お話を聞いてると、すごく 神経も使いますし、知識も実務経験も必要な難しい職業だなと思います。皆さんはどうやってお仕事につなげていらっしゃるんでしょうか。

そこが個人でペットシッターをやっている方が一番苦労するところですね。昔は 動物病院やペットショップにアナログ的にチラシを置いてもらったりしていました。今はセワクルやドッグスペシャリストナビのように、シッターさんと飼い主さんのマッチングサイトができて、淘汰されたような気がします。せひ活用してほしいですね。

ペットシッターの実際のエピソード

―特に印象に残っているエピソードはありますか?

高齢で一人暮らしの方はペットを飼いたくても世話が難しく、愛護団体から譲渡を受けられないことが多いんです。しかし、「どうせ迎えるなら助けが必要な子を迎えたい」という思いがあって。そこで、私たちの講習を受けたシッターさんと契約し、定期的にサポートしてもらう仕組みを作りました。その結果、高齢者の方は安心してペットを迎えられ、シッターさんのおかげで負担も軽減されました。この年齢層の方たちにとって、ペットがいる生活って全然違うんですよ。この方のようにシッターさんがいることで喜んでもらえて、シッターさんにとっても人生が変わるようなお手伝いができるって素晴らしい職業だと感じました。 このようなニーズがあるというのも発見でしたし、社会的にも意義のある取り組みだと改めて感じた出来事でした。

ドッグスペシャリストナビの読者にメッセージ

最近、ペット業界では生体販売に対する慎重な意見が増え、動物愛護の意識が高まっています。しかし、ペットと暮らすことは高齢者をはじめ多くの人にとって素晴らしいものであり、生活に多くのプラスをもたらします。ペットを迎えることで得られる喜びは大きく、家族が増えることで幸せも広がります。ペットとの暮らしをより快適にするサービスもたくさんあるので、そうした情報を活用しながら、最後までペットとの生活を楽しんでほしいと思います。

 

取材後記

今回の取材を通じて、ペットシッターという仕事が単なる「お世話役」ではなく、飼い主との信頼関係を築く専門職であることを改めて実感しました。木下さんは、シッターの育成と業界の発展に尽力し、シッターは飼い主の細かな要望を汲み取るために、あらゆる知識と気配りが必要であり、特に「カウンセリングの重要性」を強調されていました。また、高齢者のペットライフ支援は、社会的な意義も大きいと感じました。ペットと暮らすすべての人にとって、シッターは頼れるパートナー。今後、より多くの飼い主と信頼できるシッターが出会えるよう私たちドッグスペシャリストナビでも、信頼できるシッターと飼い主が出会える環境づくりに貢献していきたいと思います。

編集者情報

ドッグスペシャリストナビ運営事務局は、愛犬家の皆さまに信頼できる専門家やサービスの情報を提供しています。

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