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INTERVIEW

インタビュー

一般社団法人ペットライフデザイン協会 代表理事
太田 正美

愛犬ともっと快適に!暮らしをデザインする住まいとライフスタイル

今回はペットとの快適な生活を目指して、各種サポートを提供する「一般社団法人ペットライフデザイン協会」代表の太田正美さんにお話をきかせていただきました。

目次

ペットと快適な暮らしをサポートするための活動

ー「一般社団法人ペットライフデザイン協会」さんでは現在、どのような活動をしていますか?

わんちゃんが暮らしやすいように住宅のデザインなどを考えています。わんちゃんが小型犬か大型犬かで気にしなければならない高さが変わってくるんです。 わんちゃんとの快適な暮らしも大切ですが、収納もきちんと考えないといけないですし、危険ではいけないため、いろいろやっていくと、結局人にとっても快適な住まいができていきます。 ずいぶん前に「洋服何着持ってますか?」というアンケートを取ったことがあったのですが、一番多い人で「200何着」という人がいました。

ー200着?すごい数のお洋服ですね!

服をたくさん持っているとその洋服をどこにしまっておけばいいのかという問題も出てきます。また、ペット特有の匂いってありますよね。洗濯してもお洋服とかが匂うのをどのように対策をしていくのかとか、わんちゃんとの暮らしをいろいろ考えていくとすごく私たちの生活と密着しているというのを思います。

ー一緒に生活をしていくには、さまざまな部分がつながってくるんですね。

お洋服の収納もそうですし、わんちゃんのためにと考えていくと、結果それが人間にとっても心地良くもなります。

ー一緒に快適な空間が作れるのは素敵ですね!「一般社団法人ペットライフデザイン協会」として行っている具体的な活動はありますか?

「一般社団法人ペットライフデザイン協会」としてやっている一番大きい活動は、インターペット(※)です。メーカーさんの商材を紹介することを通して、このような便利なアイテムがたくさんあるということを知っていただいています。 また個人的な話になるかもしれませんが、ペット共生のペットと暮らす住まいというものをさまざまなハウスメーカーと進めています。 いろいろなメーカーさんがペットと暮らす家事業を行っていますが、なかには「本当に必要な機能なの?」とか「それ使っても本当に大丈夫なの?」というようなものも、残念ながら存在します。愛犬家さんたちが本当に必要なものを手にできるように、リフォーム会社さんたちに対しては、研修を通して発信していますね。 協会ではわんちゃんとの暮らしやすい住宅デザインや収納の工夫をサポートしています。また、インターペットを通してペット用品を紹介したり、住宅会社に対する研修も行っています。

※毎年行っている「ペットとのより良いライフスタイル」を提案する日本最大級の国際ペット産業見本市。

愛犬のケガをきっかけに住環境の重要性を知る

ーちなみに太田さんは何がきっかけでペット建築士になったんですか?

はい、以前自宅で飼っている犬が骨折したことがりました。知り合いが自宅に来た際に、わんちゃんを抱っこしてもらっていたのですが、落としてしまったことで骨折してしまったんです。ヨークシャー・テリアやトイプードルのような、ペットとして飼われることが多い小型犬は、骨の太さが4㎜ぐらいしかありません。4㎜というのは、だいたい割り箸1本分くらいの太さ。すごく細い骨が折れてしまったため、手術で骨にビスを打って、プレートで固定しました。手術は成功して、1ヶ月ほどしたら骨もくっつきました。「プレートは外さなくても問題ない」ということだったので、そのままプレートを入れたままにしておくことにしました。

骨折した経験から、住環境やペットのケガ防止の重要性を認識し、ペット建築士としての活動を始めました。

犬にとって暮らしやすい住まいは結果人間にとっても快適な住まいになる

ー犬と暮らしていくためにはどのようなことが大切ですか?

犬がケガしないような住環境を整えることも非常に重要だといえます。 例えば、滑りやすい床だと膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)を起こしやすいというのはよく言われる話です。それに加えて、私は床が滑りにくいだけでなく、クッション性も重要だとも話しています。滑りにくさだけでなく、クッション性が重要というのは、わが子がケガしたことも関係していますね。

ー愛犬が骨折したことがきっかけになっているんですね。もともとクッション素材の床はあるものだったのですか?

はい、クッション素材の床はもともとあります。実際、私も自宅にクッション素材の床を全面敷き詰めました。しかし床全面にクッション素材を敷き詰めたら、今度は人間が危ないということに気付いたのです。実際私もつまずいてしまいました。 何でも敷けばいいというわけでなく、加減って絶対必要なんだなと思いましたね。

ー床にクッションをどれだけ敷けばいいのか、どれだけ重ねればいいのかという加減はすごく重要ですよね。

はい。またケガをしにくい環境を作ることはもちろん、やはり一番大事なのは脱走防止ですよね。脱走防止といえば、柵を使うかと思いますが、柵も自分がつまずいてしまったら、また危ないことになります。だから柵を置くにしても高さも考える必要がありますよね。 実は私、去年柵につまずいてしまいました。

ー実話なのですね。大丈夫でしたか?

柵につまずいて、膝のお皿にヒビが入ってしまい、膝蓋骨脱臼でした。自分で「私どれだけそそっかしいの?」と思いながら…(笑)

ー人間と犬の両方にとっての住みやすさを考えるのは重要ですよね。もしかしたらそれって人間が老いを重ねたときの姿に似ていますか?

そうですね、まさしくそうです。年齢を重ねると、頭では上がると思っている足が上がらなくなることや、どこかにつかまらなければ柵を跨げないということももちろん出てきます。だから犬に優しい家を…って考えていくと、結構老後の人にも優しい家になっていくことにつながります。 なので、安全に暮らせる床材や脱走防止策の重要性、人間とペット双方の快適さを考えた住まいづくりを推進しています。

住まいに限らずペットとの暮らしをデザインする

ー「ペットとの暮らしをデザインする」というのは、わんちゃんと人間の人生、生き方をデザインするという意味と、住宅をデザインする意味がかかっているのでしょうか?

間違ってはいませんが、私は住宅だけには限定せずに考えています。人間でも犬でも家族と普通に暮らしていくと、さまざまなことが起こりますよね。 それは仕事かもしれないし、旅行、遊びに行くことかもしれません。普通に生活をしていくうえで、犬がいるから出来ないのではなく、犬がいてもより楽しくなるといいなと考えています。 そのため「一般社団法人ペットライフデザイン協会」では、住まいに限定せずに、フードのことや便利アイテムなど、いろいろなこともひっくるめて考えています。ひとまとめにすると、ツーリズムも含まれるかもしれませんね。

ー最近、わんちゃんと一緒に泊まれる宿など増えましたよね?

わんちゃんと泊まれる宿は増えましたけど、問題点は多くあると思っています。私もわが子たちと旅行に行くことがありますが、本当にペットのためを考えていろいろとできているところって少ないなと実感しています。ペットも家族と一緒に楽しめることを考えているのではなく、ペットOKにしておけば人が来るから、という考えの施設が多いなってすごく感じます。

ー実際に宿を利用して、ここはちょっと違うと感じられたポイントとかありますか?

ペットOKだと言いながら、和室の部屋だったことがあります。畳だと犬を室内に離すことは難しいので、どうすればいいのかとなりました。 また、脱走防止のゲートを付けている宿は、1ヵ所もありませんでした。脱走防止がないと、荷物の出し入れも大変になります。脱走防止などの配慮をされているところって、意外とありませんね。

ー宿側は、わんちゃんと一緒に旅行したいというニーズを取り込みたいと思いながらも、実際の現場は伴っていないのですね。提供者側は、食にしても旅行にしても、わんちゃんを迎えるなら、わんちゃんを含めてお客さまとしてという視点がある方なんだと思っていました。

意外ですよね。だから、例えば段差があるなどは仕方がないにしても、建物に隙間があると、小型犬は隙間に落ちてしまったり、中に入り込んでしまったりすることもあります。 人間もそうですが、犬も自宅ではなく、環境が変わったところに行けば、興奮もするし、心配や不安も持つ子もいるはずです。心配や不安を減らすような対策は、もっとして欲しいなと思いますね。

ーそのようなところに「一般社団法人ペットライフデザイン協会」さんが今後入っていくというお考えがあったりするのですか?

本当はやりたいと思っているのですが、現状は少し難しいかなと思っています。 個人の住宅の場合、多くの工務店さんやリフォーム店さん、メーカーさんがペットと暮らす家づくりを試みています。しかし、宿泊施設に関して取り組みを行っているところはまだあまりないように思います。

ーペットにとって嬉しい宿泊施設があると、人間もわんちゃんも旅行がより楽しく過ごせますよね。

そうですよね。エンドユーザーが思っていることや、求めていることをデータとして集められれば、少しずつ状況も変わると思っていて、インターネットを通じてアンケートなどもいろいろ取ったりしています。

ーすごい!実際に利用する側の意見が取り入れられて、今後もっと利用しやすい環境が整うといいですね。

周りと比較するのではなくて、その子と向き合うことが大切

ー個人の住環境やライフスタイルにあわせたペットとの向き合い方に関して、気を付けた方がいいポイントなどありますか?

わんちゃん個人と向き合ってほしいなと思っています。しつけやトレーニングなどの情報はたくさんありますが、わが子ができないとしても大丈夫だよと思ってあげてほしいですね。 わんちゃんそれぞれに個性があり、性格も違うので、同じ犬種であってもできること、できないことなどはその子によって絶対違います。違いは育て方や環境でも変わるので、周りと比較するのではなくて、自分自身がその子と向き合って、どのように時間を過ごしたいかを考えていってほしいという風に思いますね。小さい子には手がかかることもあれば、一緒に遊べる時期もあれば、年老いてサポートしてあげなければいけないことも多くなります。どの年齢であっても、すべてその子のものとして受け入れて向き合ってほしいですね。

ー素敵ですね。ドッグスペシャリストナビの経緯としては、性格や犬種が違うからこそ、わんちゃん自身にあった専門家さんを結びつけようという意図があります。そのため、すごくお話に共感させていただきました。

最近なにかで読んだのですが、イギリスのことわざに「子どもができたら犬を飼いなさい」というのがあるそうです。赤ちゃんが生まれたときにわんちゃんを飼いだすと、犬と一緒に成長できます。赤ちゃんのときには一緒に寄り添ってくれ、物心がついたときには戒めてくれ、そして思春期になると命の尊さを教えてくれるみたいな…。犬と一緒に成長できるという考え方には、本当に共感しました。

ー子どもに寄り添うわんちゃんの動画もたくさんありますよね。このようなお話を聞いたり、観たりすると、本当に犬も家族の一員だなというのをすごく実感します。

リフォームはインテリア性と安全性のバランスが重要

ーこれまでのリフォームでお客さまに喜んでもらえたことは何ですか?

そうですね、リフォームをするときは、ペット中心にしないことに一番気を付けています。 人間と犬が一緒に暮らしていくわけなので、インテリア性も絶対に大切です。インテリア性と安全性のバランスを考えなければいけません。 もちろん犬のためにというのはとても大事なことですが、そればかりではダメ。例えば、脱走防止の柵をいっぱい設置すると、人間が柵の中に入っているかどうかわからなくなるというような、作り方だけはしません。

ーそれは重要ですね。

あとは、やっぱりインテリアは崩さないようにはしていますね。

 

愛犬家がもっと楽しくなるには…

ー今回のインタビューを見てくださっている読者の方々へメッセージをお願いします。

一緒にいるわんちゃんと楽しむためには、自分も楽しい時間を持っていないとできないと考えています。だからわんちゃんを楽しませるだけでなく、ぜひ自分も一緒に楽しむということも、両方してほしいなって思いますね。 自分が楽しければ、怒ってしまう回数も減るし、そのような環境づくりができたらいいなってすごく思います。家づくりだけでなく、遊びや旅行などでも、わんちゃんと嬉しい時間を共有したら、家に帰ってから怒る時間も減る…というようになるといいですね。

ー専門家の視線から見て、気付くことはありますか?

これはいろいろ賛否両論あると思いますが、なんだかいい子ちゃんすぎる犬が多いなってすごく思いますね。 犬には犬本来の動きが絶対にあると思うのですが、そうではなくお行儀がよくずっとママを見ている子は、本当に楽しく遊べるときがあるのかと思うことがあります。 これはきっと日本のなかでのしつけなのかなと思うのですが、要因のひとつとして住環境も関係していると思いますね。住環境のなかだと限定されることも多くあると思うけど、我慢せずその子が本当に自由でいられる時間があったら嬉しいのだろうなって思います。

ーお話を聞いていると、人間の赤ちゃんと本当に一緒なんですね。最近のお子さんのなかには、親の顔色をすごく見ている子が多いと感じるので…。

そうですよね。親の顔色を見るのではなく、社会に迷惑をかけなければもっと自由にしてもいいみたいな…。

ーそうですね、のびのびと暮らせたら素敵ですね。このようなお話は、愛玩動物飼養管理士でも推奨していらっしゃいますよね。

愛玩動物飼養管理士は、犬や猫などの動物を適切に飼養管理したり、しつけなどの知識を習得していることが前提なので、愛玩動物の生体を理解しなければいけないというのがベースにあります。 犬の生体から住宅に関してや、ペット共存の集合住宅に関しての知識だけでなく、愛玩動物飼養管理士の知識もベースにあるかもしれませんね。

ー現在、日本にはどのくらいの愛玩動物飼養管理士がいらっしゃるのですか?

愛玩動物飼養管理士には、2級と1級があり、すべて合わせるとすごい数の方がいるみたいですよ。有資格者の数は公益社団法人日本愛玩動物協会のホームページで確認できるのですが、愛玩動物飼養管理士の資格を持つ人は約23万人いるそうです。

ー愛玩動物飼養管理士の資格を持っている方がそこまでいるのはびっくりしました。

動物の専門学校に通っているほとんどの子は、愛玩動物飼養管理士を取得するからこれほどの数になっているみたいですね。またトリミングスクールなどでも、愛玩動物飼養管理士要請制度が採用されることが多いです。

ーそうだったのですね。愛玩動物飼養管理士は、普段あまり聞くことがない言葉でした。

私は逆にペット建築士の方が珍しいのかと思っていました。ただ愛玩動物飼養管理士だとしても、ペット建築士だとしても、人によって得意としていることに違いはありますよね。

ー得意な部分を専門家として生かし、愛犬と人の双方が幸せな環境で過ごせるためのお仕事、とても素敵ですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。 

取材後記

今回の取材を通じて、ペットとの快適な暮らしを実現するためには、住まいだけでなくライフスタイル全体を包括的にデザインすることが重要だと改めて感じました。太田氏はペット視点の住まいの工夫や安全面の配慮を丁寧に語り、人とペットが共に心地よく暮らせる環境づくりへの情熱を感じました。

編集者情報

ドッグスペシャリストナビ運営事務局は、愛犬家の皆さまに信頼できる専門家やサービスの情報を提供しています。

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